初恋

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 だから元老院の話をしないでと、少年が懇願しようとしたところ、二人きりだった執務室のドアが開いた。  少年は顔を上げる。その目に映った顔を見て、少年はほうっと息を漏らした。 「陛下!ギャスパー・キャロル様がご到着に、て、貴殿は!」  部屋に入ってきたのはカノンだ。幽閉されていた頃から真摯に世話を焼いてくれた彼には、少年も緊張しないで済む。カノンも少年を本心では恐れてしまっているはずだが、あまり態度に出さないでいてくれるのでリラックスできるのだ。 「メッゾ老、陛下に何をしたのです」 「いいや、何にも。わしはただ、緊張されているであろう陛下を案じてここまで来たのみ。…そう睨むな、息子よ」 「…貴殿はノクターンの監視に集中していただきたい。この国に小さいとはいえ新しい風が吹くのです。かの金竜がまた、陛下の命を狙わないとも限らない」  カノンの言葉に、メッゾは王に慇懃にこうべを垂れてから、仕方がないとばかりに言った。 「まあ、息子の言う通りだな。ノクターンが動いたらかなわん。老ぼれは退散するとしよう」  メッゾは執務室の窓を遠慮なく開け放ち、瞬時に真っ赤な竜となって飛び立つ。彼が向かうのは無論元老院。青の屋根が並ぶ王都ニーアラで唯一金の屋根をいただく、広大な低い建物だ。 「さ、陛下。大丈夫、うまくやれますよ」     
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