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オールバックに髪を整えられ、黒地に銀糸で刺繍の入ったロングジャケットに着せ替えられ、ジャラジャラと装飾品を体に纏わされたギャスパーは、どうやら全く寒さを感じないらしい薄着の竜人族の女性たちに何とか乞うて先ほどの狼のコートを着ることに成功した。
「ギャスパー様、そんなにお寒いのですか?お召し物が大変お似合いで、侍女も大絶賛だったではないですか」
前を歩くアレグロは、さっさと巨大な風呂場からギャスパーを引っ張り上げ衣装部屋で待ち構えていた侍女らとギャスパーの見た目を磨き上げ、その間竜人族の暮らしから政治機構について語りつくした猛者である。カノンは早々に引き上げ、先に国王陛下の元に向かうと出て行った。着せ替え人形を前にして鼻息を荒くする女性たちからの逃避だと、ギャスパーは一瞬で察しがついた。
「寒いですよ。それと、皆様の方が美形だ。いやこれは謙遜などでなく」
ギャスパーの言葉は全くの本音だった。確かに凛々しいとか爽やかとか言われてよくモテるギャスパーなのだが、明らかに竜人たちの方が彫りが深く目の色も髪の色もきらびやかで、なぜか皆一様にスレンダーである。実戦向けの筋肉ばっかりついたギャスパーは着痩せする方であるものの、ドラコルシア風に締め上げられたベストが少々きつい。
「例えばほら、アレグロさんももちろんですが、カノンさん。俺と同じくらいの身長なのに、絶対俺より脚が長い。顔も完璧な美丈夫じゃないですか」
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