初恋

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「あっ、さ、宰相なんてただのくどい顔じゃあないですか!私は好きですけど、その…」  顔を真っ赤にして面白いくらいに慌てるアレグロに笑って、ギャスパーは言った。 「頑張ってくださいね。カノンさんは鈍そうだ」 「わっ、私のことはいいのですよ!それよりその、頑張るのはギャスパー様です。これから婚約者にお会いになるのですから」 「それで、政争は終わったとはいえ今でも元老院には現国王陛下の政治に反対する竜らがいるのでしょう?国王陛下も安定しているとは言えませんよね」 「そうですね、陛下は争いを好まれないとはいえ、元老院は年々王城権力を吸い取って行っております。…さ、もう直ぐ到着です。ドラコルシア国の政治機構については、また後日詳しく説明いたしますよ。陛下のお部屋で、カノン宰相閣下と陛下がお待ちです。急ぎましょう」  アレグロは言った。細かい説明をしている暇は本当に無いのだろうが、彼女はどこか説明をすることにためらっているかのようでもある。そんなアレグロにこれ以上追及しても仕方がないと思って、ギャスパーは脳内に情報を整理した。元老院とはどういったところなのかが、ドラコルシアを知る上できっと鍵となると、ギャスパーはやわらかな微笑みのうちで頭を回す。     
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