初恋

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 その言葉に、ギャスパーはピキッと固まる。背後で、アレグロがやりづらそうに目をそらす。続いて反応をしたのはカノンだ。彼は片手を顔に当てて困ったようにため息をついた。 「あの、陛下?それはどういう」  気をぬくとその美貌にぼうっとしてしまいそうなギャスパーだったから、聞き間違いだと思った。隠す気もないほどに卑屈なそのセリフはおよそこの少年王の紅色の唇からこぼれ出るにはふさわしくなく、彼のような者は常に堂々と自信あふれる言葉を言うことこそふさわしいとギャスパーは掛け値なしにそう思った。  しかし、目の前の真っ白の竜は続けてこう言ったのだ。 「僕はその、特殊な見た目をしています。こんな、どこにいても奇異の目で見られる…。僕なんかが欲をかいて、噂に聞くあなたとお会いしてみたいと…その、臣下に頼んだのが間違いだったかもしれません。まさか本当に、あなたを婚約者として呼んでしまうとは…」  この王はどうやら、全く見かけによらない性格をしているらしい。彼はたまにギャスパーの方を見てはおどおどと目をそらす。  彼が緊張しているのがかわいそうで、なんとか打ち解けようとギャスパーは口を開いた。 「失礼ですが陛下、俺は未だあなた様の御名を預かり知りません。あなた様さえお許しになるのなら、俺に教えてはくださいませんか?」     
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