初恋

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「教えてくださればよいのです。あなたのことなら、なんだって知りたい」 「っ…こんな風に竜人のいいなりでドラコルシアまで来て、あなたはなんで僕を嫌わないの?」 「嫌って欲しいのですか?」  矢継ぎ早に繰り広げられた会話一つとっても楽しくて仕方がないギャスパーだったが、アリアはパッと瞳を伏せる。いつもなら知り合って間もない他人と目も合わせられなかったアリアは、自分がいつの間にかギャスパーの茶色の目を見て話していたと気づき、その事実にも動揺した。アリアがこんな風に初対面の人間と打ち解けられたのは、過去にも例が少ない。  嫌われたいのか、との問いの答えは否だ。  しかしまさか婚約が実現してしまうと思っていなかったから、ギャスパーにこんなにも好かれてしまうとアリアは罪悪感で潰されそうになる。ギャスパーの運命を狂わせたのは自分だ、と、アリアはここ数日眠れずにいた。 「…嫌ってほしい、とは、思ってないけど」  アリアが目をそらし、まぶたを震わせてそう言うと、ギャスパーはほっと胸をなでおろす。 「よかった!陛下のご要望は全て叶えたいと思っていますが、嫌ってほしいと言われたらどうして良いかわからなくなるところでした」 「ギャスパーは馬鹿だ!」     
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