初恋

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 百パーセント信じられるかと問われればわからない。しかしようやくこの世に生まれたような、ようやく命を得たような、そんな喜びがあったのだ。  温かいものに包まれていると思ったらそれは、ひょんなことから得てしまった婚約者の腕だとアリアは気がついて、彼にすがった。どうしていいのかわからない白竜は、小さく震えていたその心をようやく素直に受け入れられる。  嬉しい、と漏らした言葉はきっと、ギャスパーの耳に届いたろう。  力のこもった腕の中、アリア初めて、大きく大きく息を吸った。生きている人間の匂いが優しかった。産声をかみ殺すことなく、生まれたての恋と一緒にアリアは命を得たのだ。
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