揺らめく影は何を狙う

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揺らめく影は何を狙う

「それで、ノクターン閣下。貴殿は王城に様子を見に行かれないのですかな?」  煙草をふかしながら、老いた赤竜はそう言った。嗅覚と味覚が衰えてきたおかげで、彼は強いメントールの香りを肺いっぱい吸い込むときのみ澄んだ空気の味を楽しむことができる。 「はっはは。それは無理だね、メッゾ。私が孫からどれだけ嫌われているか、お前も知るところだろう」  黄金の屋根がかかる元老院の中庭、満月に照らされる雪の中、金色の竜が笑った。本来の姿で笑うノクターンは地に響く声を出す。  金竜ノクターンは、このドラコルシア元老院の長、元老院院長を務める長老の竜だ。彼はすでに、八千年近い年を生きている。  スルスルと金竜は体を縮め、爪と牙もその体躯も小さくしていき、最後には人の姿となった。細い体に金の長い髪をなびかせて笑う青年はこの国で最も年をとった竜だが、その見た目はむしろ若返り、一切の老化を見せない。 「アリア陛下にギャスパー・キャロル。彼らが知り合って二週間経った今、二人は仲睦まじいようですぞ」     
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