揺らめく影は何を狙う

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 そう言ってゆったりと椅子に腰掛けるメッゾから、ノクターンは煙草を一口もらう。牙と牙の間から吐かれる煙は高く夜空に登り、真冬の空気を包んで消えていき、それを眺めながらノクターンは言った。歌うような声だった。 「へえ、それは良かったねえ」 「…ところで、原始竜の鱗は万能薬とのことですが。しかし貴殿を見る限り、不老不死の効能もあるようだ」  メッゾの問いかけに、ノクターンはゆるりと笑うのみだった。一切老けない彼がいずれかのタイミングでアリアの鱗を摂取したのではないかという噂は国中に広まり、未知の原始竜の力を取り込んだノクターンに、怯んだ国民は手出しができない。アリアは生粋の原始竜と異なり、理性を持ち人の形をとることはできるが、やはりその特徴からして、突然変異の先祖返りであることは間違いないようである、というのが竜人たちの見解だ。アリアが生まれてすぐ彼の生死をかけての内乱が起き、その間地下に幽閉されてたアリアの体は隅々まで調べられたのだ。  幼いアリアを一目見て、彼を殺すべきだと言ったのはノクターン。  ノクターンを止め、女王陛下の血筋を絶やしてはならないと主張したのはメッゾだ。     
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