揺らめく影は何を狙う

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 この、王城とは別の政治組織元老院を作り上げたノクターンの監視のために、メッゾは老い先短い人生を賭けここに潜り込んだ。政争に疲弊したドラコルシア国民の強い要請もあって争いは終結を迎えたが、元老院という組織の設立と引き換えに戦いを終えたこのノクターンは、やはり転んでもただでは起きない男である。 「はっは。私が何も動いていないと、私の補佐官の君が一番知っているんじゃないか?それに、私がこの姿で居られるのは誰のおかげか想像がついているだろう。恩人を排するほど、私の血は凍ってはいない。老後は、我が孫殿のお手伝いをするまでだよ」  ノクターンはわざとらしく言い、地につく自らの長い髪を持ち上げた。同じ色の月に髪を当て、そのきらめきを見てはうっとりとしている。  ノクターンの変わらぬ気質にうんざりし、メッゾは遠慮も捨てて彼に問う。もう数百年以上彼を監視しているメッゾだが、未だこのノクターンのしっぽをつかめないのだ。  彼の性格をメッゾはよく知っている。何もするつもりがないなら、さっさと政界などから彼は身を引くのに、まだこの元老院の長に収まっている。 「あんなにアリア陛下を排することを主張していた貴殿なのに、と疑っているのだ。陛下がお力を操れなくなったから満足、というわけでもないだろう」 「なに、誕生されたばかりの陛下のお姿に恐れを抱いたのみだ。白竜は怖いし、原始竜も怖い。我々の種が当然持ちうる感情さ。国のために幼いうちから、異質なアリア陛下の命を刈り取るべきと思うのは、不自然なことかな」     
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