揺らめく影は何を狙う

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「アリア陛下にはこのまま、長く玉座に座っていただかねばね。…おやメッゾ、眠いのかい?最近すぐに寝てしまうと、君は愚痴っていたが…」  長い袖口でその口を覆い、やせっぽちのノクターンは老爺を見下ろす。煙草に混ぜられた薬に気がつかない原因は、一重にメッゾが死が近いほどに老いてしまったからだろうと、ノクターンはかつてのライバルを哀れな目線で見下ろした。 「白竜なんて異端者は、使ってこそ価値があるのにね」  血が吹き出るのを構わず、幽閉された孫のアリアから鱗を抜き取りそれをすすりしゃぶったのはもう遠い昔のことだ。大多数の竜人族が持つ、白竜を恐れる、という感覚を知らないノクターンはまんまと頑丈な体を手に入れ、今に至る。 「でも、おとなしくしててくれないと使えないよね。まあ我が孫はおとなしいも何も、体の変化もできないし火すら吹けないのだけれどね。…出てきていいよ」  すっかり眠りの世界に落ちたメッゾはもはやノクターンの眼中にない。アリアの鱗を利用せず、時間に逆らわない彼をノクターンはドラコルシア一の馬鹿だとすら思っていた。  出てきていいよ、の言葉に、柱の陰に肩が覗いた。  鱗が密集する首元に短く切ったショートボブを揺らしながら、恐る恐るその竜は姿を現す。 「ほら、怖がらないで。君の大好きな上司のお父さんは、もう寝ているから」     
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