君の心をどうか見せて

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「呆れませんよ、ただの言葉遊びです。ふふ、あなたが本当に白竜になってしまったら、あんまり綺麗で卒倒してしまうかも」  ギャスパーのその言葉に、アリアは身じろいで彼の胸元に顔を埋めた。なんだかこれ以上顔を見られるのが恥ずかしくて、情けなくて、目を合わせてられなくなったのだ。  アリアが自由に竜に戻る能力を失った理由を、ギャスパーはすでにカノンとアレグロに聞いているために知っている。そしてその無力さが、王となったアリアの凄まじいコンプレックスとなっていることも。アリアはその力を疎んでいたはずなのに、いざ失ったら結局そのことが自分を苦しめているなど、情けないことこの上ない。  けれどギャスパーは決して、アリアの傷を刺激しなかった。 「それで陛下、今夜は何を教えてくださるのです。伝統料理に文化、占星術はおととい聞きましたし」  彼はまたアリアのためにそう言った。アリアの心を読み取って話を変えてくれるのも、本当に心地がいい男だった。  ギャスパーにどんな話をしてよいものかとアリアは戸惑い、まるで講義のようなつまらない話しかできないことを恥じていたのに、ギャスパーは全て目を輝かせて聞いてくれる。それが楽しくて、今夜は何について話そうかとアリアは考えてしまうようになったのだが、実は一つ決意してここに彼を呼んだのだ。     
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