君の心をどうか見せて

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「今夜は、その、つまらないかもしれないんだけど」  アリアは言った。彼は何も、ただギャスパーと星を眺めるためにここに来たわけではない。今日、恋人に聞いてもらおうとした話は、万が一にでも誰にも聞き耳を立てられたくないのだ。 「あなたのお話で、つまらないものなんて一つもありませんよ」 「またギャスパーはそんなこと言って…」 「本当です。さ、遠慮しないで。俺たちは婚約者じゃないですか」  ギャスパーの心地よい低音に、アリアは背中を押された。彼の瞳にアリアに対する恐怖がひとかけらもないことが、何より嬉しかった。 「今日は、僕の…僕自身の話をしてもいい?」  柔らかな草の上に座ったギャスパーの長い足の中、アリアは彼を見上げて言った。凄まじい勇気を込めた台詞だった。  声が震えてしまう。まるで普段アリアに話しかける竜人たちのようだ。  ギャスパーはすぐに返事をくれた。なのにその瞬間までが途方もなく長く、アリアは緊張気味に喉を鳴らす。 「それは、とても嬉しいです。ぜひお聞かせ願えますか?」  ギャスパーがアリアの頬を撫でてそう言った。アリアが緊張していると、その瞳一つでギャスパーはわかったのだ。     
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