君の心をどうか見せて

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 嬉しい、という言葉に背中を押され、アリアは息を吸った。自分のことを知って欲しいと思ったのは初めてだった。 「僕の母上は賢帝と称えられた女王様で、名前はチルカ。地下水が少ないこの国で、城に雨水ろ過装置を作って町中に水を運ばせ、民の生活を変えた竜だ」  アリアはポツポツと語りだす。  国に尽くした母のこと。そして、母は白竜アリアを生んでしまったショックで亡くなったこと。他に兄弟がおらず、争いののち、ただ王権と血すじのみを崇める竜らによって王座に押し上げられたこと。祖父がアリアを脅かしていること。  そしてアリアは、誰にも言ったことのない心の核に触れようとして、どうしても言い淀んでしまう。 「僕は…僕がこのまま王様でいていいのかって、もう何百年も悩んでいる。もう気付いてるでしょう、僕は無能なんだ。何一つできなくて、全部、全部お祖父様に手伝ってもらってて、」  アリアは言葉を詰まらせる。ギャスパーは、彼から少しだけ離れて、懸命に心の内を晒してくれようとするアリアの表情を探った。  もう半月もアリアのそばで仕事を見ていたギャスパーはとっくに勘づいていた。     
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