君の心をどうか見せて

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 この少年王アリアは傀儡だ。大きな王城の政府機能は少しずつ腐食してくように元老院、その長ノクターンにかすめ取られ、今や末端の決裁権しかアリアの手元に残っていない。 「僕のこと、みんながどう思ってるかなんて僕が一番知ってるんだ」 「陛下」 「お祖父様がいなかったら僕は何もできない。竜にもなれないし、空も飛べない。みんな僕のことを怖がってたほど、力を持ってたのにね」 「陛下」  あまりの不甲斐なさに、アリアは言葉を紡げない。今だってギャスパーは慰めてくれると期待して彼に語っているのだから、アリアは自分の弱さに反吐が出そうだった。  しかしギャスパーは、自信なさげなアリアの言葉を遮ってこう言った。 「陛下。本当のことをおっしゃってください」 「えっ?」  アリアは目を見開いた。本当のこと、と言われても、嘘など一つも吐いたことはない。  戸惑うアリアに、ギャスパーは思案げな顔をして、顎をさする。考え事をしている時の彼の癖だった。 「これはもしもの話ですが」 「う、うん」  そう前置きをして、ギャスパーは言った。 「俺は、あなたはもう国王を降りてもいいと思っているのです」  はっきりと言われたギャスパーの言葉を飲み込むのに、アリアは数秒要してしまった。     
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