君の心をどうか見せて

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 国王を辞めたいと思った時も、操り人形の自分に辟易した時も、力が何もなくなってしまったのを恥じた時も、いつも、アリアの味方を自称した周囲は、アリアに国王であることを求めたからだ。その挙句、人間の国からギャスパーを引っ張って来てまでアリアを王座に座らせようとした。 「ギャスパー、それは本気で言ってるの」 「ええ。あ、もちろん俺は元老院の味方、というわけではありませんよ。というより、こう言っては怒られてしまいますが、ヒューマリア国出身の人間として正直、王城の味方も元老院の味方もできないのです。千年前からのいざこざなんて、結局俺は歴史上でしか知りませんしね」  ギャスパーの言うことはもっともだが、はっきりとそんな大胆なことを述べる彼に、アリアは驚きすぎて何も言えなくなる。さらに次にギャスパーの発した言葉は、がんじがらめに縛られたアリアの心をほんの少し、解放へと導くこととなる。 「だからね、アリア陛下。俺はただ、あなた個人の味方をしたいのですよ」  照れたようにはにかんでギャスパーは言った。言われたことの意味がわからなくてアリアは金の目を見開き、解放に震える心を持て余して、ギャスパーに言った。 「僕、個人の。そんなこと、誰からも…」     
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