君の心をどうか見せて

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 竜人らは皆少しずつ、水や雷、小さな火を操れるが、アリアはそれらをはるかにしのぐ能力の持ち主で、彼の一存で国を滅ぼすことだってできるほどだった。忌み嫌われたその力などなくなればいいのに、とアリアは願っていたところ、今度は何一つその手の中には残らなくなってしまった。  アリアは目を伏せる。心の底に沈殿していた暗闇を吐き出すのは初めてで、相手が大事な人であるからこそ少し怖い。  しかしギャスパーは、またもアリアの思わぬことを言う。 「それは違いますよ。不可抗力だったんだ、あなたが原始竜とやらの先祖返りとして生まれてくることは」 「そんな、」 「そうですよ。考えてもみてください。あなたの責任で起きたことなど一つもない。あなたはただ生まれ、そしてこんな苦境に陥る運命をたどった。あなたは周りを気にして自らをこんな風になるまで押し殺したのに、結局今も、幸せそうには見えない」 「…」  そんな風に考えたことは一度もなかったアリアだったから、ギャスパーの発言に口をつぐむしかない。  自らを恨んだことは何度もあった。しかし、母や国や竜人族や、周りの何かを憎んだことなど、アリアは一度もなかったのだ。     
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