君の心をどうか見せて

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「俺なら無理です、そんな状況で千五百年生きるなんて耐えられない。さっさと命を捨てるか、それかこんな運命を押し付けた国家に復讐するかのどちらかを取る。それなのに、アリア陛下はそれをしなかった。今だって国のために働いている。たとえ傀儡だとしても、きちんと王座に収まっている。その理由を、何故だと思いますか?」  問いかけるギャスパーの声は真剣で、彼の顔にもほんの少し緊張があった。きっと彼は誠心誠意力を尽くして、アリアその人のために話してくれている。こんな人に出会ってしまったことは分不相応だとすら考えてしまうアリアだったが、ギャスパーの問いかけはそんな卑屈者の思考を遮った。 「それは、僕が…」  しかしどうしてもアリアは理由がわからない。そんな自分にアリアは嫌気がさすものの、ギャスパーは柔らかく微笑んで、少年王に正解をくれた。 「それはね、陛下。あなたが苦境に耐えられるほどに強くて、そして優しい方だからですよ」  確かに小さな心に風が吹き抜けたことを、アリアは感じていた。  誰にも言われたことのない評価に、アリアはぐらっとめまいがした。  アリアに相対する竜人族は全て、アリアを通して別のものを見ていた。味方をするものは王家の血を、敵対するものは原始竜の力を、まるでアリアそのものがこの世にいないかのように、それだけを見ていたのだ。  こんな風にただアリアのことに言及してくれたものはいない。これがギャスパーの言う、アリア個人の味方をする、ということの表れだとしたら、こんなに幸せなことはなかった。     
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