君の心をどうか見せて

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 しかし小さな白竜は、こんなに甘やかな時間を受け入れるには傷を負いすぎた。  アリアは言う。 「優しかったって強かったって、僕は結局ノクターンお祖父様に全てを明け渡すしかなかった」 「そうですね。しかし俺は思うのです。アリア陛下を苦しめたこんな国、さっさと統治したいものに任せてしまえばいいのに、と」 「で、でもそれはっ!」  勢いでそう言い返したところで、アリアは気がついた。  にっこりと笑うギャスパーの意図に、そしてすっかりその口に乗せられていたことに思い至って、思わずかあっと頬が熱くなる。 「言ったでしょう。『国王を降りてもいいと思う』というのはもしもの話で、俺はあくまであなた個人の味方だ、と」 「ギャスパー、あなたって人は!」 「よくそんな目で見られます。すみません、こんな性分なもので」  嫌いになりました?とクスクス笑うギャスパーに、まんまとはめられたアリアは声も出ない。つり目の大きな瞳で恋人を睨むと、ギャスパーは慌ててこう言った。 「陛下、もう一度伺います。本当のことをおっしゃってください」  振り出しに戻ったその問いに、アリアは観念するしか道はない。     
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