君の心をどうか見せて

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 いろいろな理由をつけて、自らのダメなところを並べ立てて直視するのをためらっていた本当の欲求が、アリアの心を満たして溢れ出した。 「僕は、」  覚悟が足りなくて、アリアはもう一度息を吸う。 「僕は、ドラコルシア国王で居たいんだ!」  初めてはっきりと口にした希望に、ギャスパーはやっぱり、という表情を浮かべ、アリアを見た。積み重なった卑屈者の言い訳を一気に振り払って、勇気を振り絞って言った少年王の瞳に浮かぶのは、怯えと悔しさとともにある、決してくすまない金色の光だった。  アリアの脳内に浮かぶのは、重い王冠を被せられた即位式からの記憶だ。  夏の朝、王城の雨水ろ過水路に水は溢れ、キラキラと陽光を反射して輝いていた。  ずっとずっと地下に独りきりだったアリアは久しぶりに外に出て、未来にほんの少しだけ期待したのだ。こんなに壮麗な城で、国民に即位の挨拶をすることを。カノンやメッゾから聞いていた通り、愛された母チルカのようにこの国に尽くすそんな未来を。切なく冷え切り、怯えられることに怯えていたその心も思わず跳ねてしまうような、そんな不思議な力がこの城にはあった。  しかし、城のバルコニーからアリアが姿を現した時、国民はシンと静まり返る。     
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