君の心をどうか見せて

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 ドラコルシア万歳、と、彼らは確かに叫んでいた。ようやくメッゾとノクターンの戦いが終わり、国に王が帰ってくるとなって彼らは期待していたはずなのに、アリアの姿をいざ目に映すと、すべての国民の顔が青くなった。  空を舞っていた竜達はピタッと動きを止め、地に立っていた竜らも、人の姿になった竜らも、アリアを見つめたまま、身動きひとつできなくなったのだ。  その瞬間を、アリアは今も忘れない。  彼らの期待は本能的な恐怖で塗り替えられ、忠誠と祝福よりも恐れによって頭を垂れる。  次第に王城に、時代の隙間を伺っていたノクターンの金の毒矢が切り込むことになる。ようやく城の竜が、原始竜そっくりの白竜の存在に慣れた頃にはもう遅かった。アリアはすっかり心を閉ざし口も縫い合わせ、ほとんどの権利はノクターンが奪っていった。  アリアは気がついていた。祖父はどうやらアリアを恐れていないと。けれど、愛してもくれないのだと、はっきり知っていたのだ。 「本当は、このままじゃいけないってわかってる。お祖父様は僕の父上…自分の息子を殺したとか、母上の卵を腐らせたとか、そんな噂も聞くような人だ。実際彼は、今までドラコルシアが絶対にやらなかったことで国を肥えさせようとしている。全部全部わかってるのに、僕は腰抜けだから、何も言えなかった…!」  アリアは言葉を止められない。     
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