君の心をどうか見せて

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「元老院の金は全部、ノクターンお祖父様が手にした貿易権で得られている。けどお祖父様は、卑劣な方法で貿易を行っている。ただでさえ、竜人族は寿命が長くて腕力があって恐れられてしまうんだ。ギャスパーも見たでしょう、先日ドラコルシアに挨拶しに来たペガサスたちは震えてた…。竜人は戦いを好まないって言っても、他の、例えば人間から見て、僕たちの体がどんな風に見えるかも知ってる。僕らは人間みたいな見た目になれるって言ったって、結局本当の見た目はああなんだから。それなのにお祖父様は、砂漠の小国に水を法外な値段で売りつけたり、他国の紛争を煽るために武器を…しかも、どこから奪ってきたのか、竜の牙や爪からつくられた武器を流したりしてるんだ。僕はそれを、」 「止めたい?」 「止めたい!」  ギャスパーの問いかけにアリアは間髪入れずにそう答え、力強くギャスパーの顔を見る。 「…でも、自信がないんだ。僕は実際にこの国を動かしたことが、在位五百年の間に一度もない。僕は僕に向けられる目に耐えきれなくて、ただ守られる立場の竜になってしまった。翼も爪も持たない、何の力も無くなった僕は、元老院にかないっこない」 「そんなこともありませんよ」  アリアにギャスパーは言い、人差し指で自分の顔を指す。 「言った通り、俺は陛下だけの味方です。さすがに竜を斬ったことはないけれど、海獣にトロールに、理性を失ったオークを倒したこともある。狼に囲まれた我が国の姫を守り通して、雪山を超えたこともありますよ」  アリアの知る人類からかけ離れたその実績たちに、アリアはぽかんとして恋人を見る。彼が早朝一人で剣を振るっていることは知っていたが、一度も彼が実戦をしているところをアリアは見たことがない。だから忘れかけてはいたのだが、このギャスパーという人間はとてつもなく強いのだ。     
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