君の心をどうか見せて

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 こうまで言い切ってしまうギャスパーは、まだこの王城に来て二週間。そして彼の言うように、元は祖国のために任務を引き受けた、契約結婚のために呼び出されたのである。  そんなギャスパーは、アリアに惚れてしまうことを全く予想していなかったという。アリアだって、彼がこんな風に、王城にとどまってくれるようになるなど想像もしていなかった。 「他に、何が不安なのです」  吐露していいものか、と揺れていたアリアの気持ちを、このギャスパーはやはり察してしまったらしい。彼は聡い男であるのと同時に、アリアのことは人一倍よく見ているから、小さな引っ掛かりすら見逃さない。 「…言ったら、ギャスパーはきっと僕を疑う」 「陛下のお気持ちをですか?疑いませんよ。それに、嫌いになることだってない。この心臓にかけてもいい」  また後ろ向きに予防線を張ってしまうアリアに、ギャスパーは慣れたように、しかし心を込めて返す。  アリアは告白した。 「…ごめん。疑っているのは、僕だ」  ギャスパーに失礼なのではないか、とか、こんなにも真摯に言葉をくれるのに、とか、アリアの脳内は罪悪感で満ちるが、それが彼の本音だった。不安で不安で仕方がない。感情ほど不安定なものはないと、アリアはよく知っていた。 「なるほど。俺の気持ちを、あなたは信じきれていない」     
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