君の心をどうか見せて

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 ギャスパーは言葉を切った。彼にしては珍しく、どう心を伝えようかとためらっているらしい。 「今俺を信じられなくても、俺はいいんです。なんなら俺を試したっていい。絶対いつか信じさせてみせるから」  大げさだったかな、とギャスパーは頭を掻く。  そんなわがままを許されていいものかと、アリアは幸福を受け入れられない。本当はそれに甘えてしまいたいけれど、今までの日々のアリアが恐れてしまう。自分に幸せは一生訪れないと思っていたから、今この瞬間が夢だと言われた方が納得できて、アリアの心は締め付けられた。  アリアはうつむきながら、目を開いて真っ白の手の甲を見る。星々の光を吸収し虹色の輝きを浮かべる鱗はやはりどうしても嫌いで、アリアはギャスパーの方に向き直った。  茶色の瞳と目があう。すっと通った鼻筋を挟むそのまなこには、いつだってアリアへの気持ちがあった。  アリアは一つ聞いた。とても勇気がいる質問で、とても些細なものだった。 「…例えば僕が、骨が浮いた翼を持っているとして」 「はい」 「牙が口からはみ出てて、ギャスパーの頭くらいある爪があって、」 「はい」 「あなたの何倍も大きくて、この大陸を焼き尽くしてしまえるほどの力があったとしても」 「…はい」     
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