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ゆっくりと慎重に、そして真剣に言葉を紡ぐアリアに合わせて、ギャスパーは相槌を打つ。もう二人が語らい始めて二時間だ。しかし、日付をまたいでしまいそうな時刻なのに、二人に眠気は訪れない。心が近づいていくようなこの夜に、彼らは没頭していった。
「それでも、僕のことをちょっとでも、あなたは好きでいてくれる?」
その問いは間違いなく恋人を試すもので、あまりに脆弱で卑怯な手段に、アリアは自らを責めた。それでも彼は訊かずにはいられなかった。孤独だった時間と愛を知らなかった時間が長すぎて、少しでも保証が多くないと、彼の心は簡単には甘いものを受け入れられない。差し出された好意を飲み込めないのである。
しかし、その言葉に返事はなかった。
アリアの体が震える。思わず下げてしまった視線を戻せずに、アリアはまるで、判決を待つ囚人かのように、ギャスパーの声を待つしかない。
体のコントロールがきかないことは、アリアにとって最も恐ろしいことだった。悪夢にうなされた時、感情が乱高下した時、どうしようもなく虚しさを感じるふとした瞬間、アリアの体は変化する。自らが望んでいないのに、鱗は肌色を侵食していき、ささやかな牙は鋭さを増す。白竜になりきれもせずに、ボコボコと音を立てながら四肢が醜く変わる瞬間をギャスパーに見られたら、彼の心は揺らいでも何らおかしくない。カノンやアレグロだってそんなアリアを目にした時、何も言えずにただ立ち尽くしたのだから。
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