君の心をどうか見せて

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 どくどくと鳴る心臓がうるさかった。  自分から言いだしたことなのに、こんな風に緊張してしまっては、墓穴を掘るかもしれない。ギャスパーに醜態を晒すかもしれない、と思った時、アリアは耐えきれなくなってしまいそうだった。  しかし次の瞬間、アリアの脳内の不安の何もかもが、火花を散らしてはじけて消えた。  アリアを襲ったのは、頭が真っ白になるような口づけだった。  目を見開いた時に茶色のまつげが至近距離に迫り、純白のまつげと交差する。ギャスパーは鼻が高いからそれが邪魔そうで、しかし角度を変えて、何度もなんども、アリアの閉ざされた唇を舐めた。行き来する熱い肉に背筋が泡立つ。ずっとずっと、ささやかで軽いキスしか教えられなかったアリアは、拘束するように抱きしめられるこんな瞬間をどうしのいでいいのかわからなくて、ついに口を開けてしまった。今まで頑なに閉ざしていたのに、ギャスパーに侵入を許したのだ。  ギャスパーは薄く目を開く。目を閉じることも忘れていたアリアは、彼と目が合った瞬間、もう瞳を伏せることができなくなってしまった。     
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