ドラコルシアとヒューマリア

1/34
195人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ

ドラコルシアとヒューマリア

 竜人族の帝国ドラコルシアから遠く離れた南端の土地に、人類が住む小さな国があった。その名はヒューマリア国。様々な種族がひしめき合う大陸において唯一の人類の国は、最弱の国家である。  広い広い王宮の中ひんやりとした王国軍総司令室に呼び出された若い男は、ピシッと背筋を伸ばして立ちつつも、その表情はリラックスしていた。  青の軍服のよく似合う、柔和な笑みを浮かべた男の視線の先に座るのは、彼の直属の上司だ。手を組みその上に顎を乗せた口ひげの男、グレーの髪をオールバックにした泣く子も黙る王国軍総司令官エルマー・キングスレーは、敬礼した部下に告げた。 「第一師団団長、ギャスパー・キャロル。君に特別な任務を任せたい」  老眼鏡の向こうで、キングスレーの瞳がキラリと光る。一方、特別な任務、と聞いた若い男ギャスパーは、いつも通りの展開に内心息を吐きつつ、表情は一切変えずに上司に笑顔で聞いた。 「それはそれは。俺が王国のお役に立てるというなら、何なりとこなして参りましょう」     
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!