君の心をどうか見せて

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君の心をどうか見せて

 他者に好きだと言われたことは、一五一一年の生涯で初めてだった。  アリアは未だにその事実に戸惑い、芽生えた感情に慣れずにいる。  竜人族に植えこまれた白竜に対する恐れはおそらく、二度と理性なき原始竜に戻らないようにと遺伝子にプログラムされたものだろう、だなんて一部の竜は言うが、実際どうなのかは誰にもわからない。  ただ白く生まれた、というだけで、アリアは今まで、誰からも純粋な好意を向けられたことがなかった。しかし幼いころはもっと酷かった。母である女王チルカの忠臣メッゾらがアリアの盾とならなければ、その命は欲にまみれる祖父に刈り取られることとなったのだから。  それからアリアは自らがどう振る舞うべきなのかを学んだ。  手に持つ力はどうやら他の竜人族の持つものと似通ってはいるが、その力が絶大だとアリアは知った。指先を動かすだけで高波を起こしたり、翼を動かすだけで山を焼き尽くしたりすることのできる力は恐怖の対象であると学んだアリアは、それを封印することを決意し、果てには本当に力を失い、無力の王となってしまった。     
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