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18歳、初めてのバースデー
いつだって冬は寒い。私はクローゼットのドアを開け、薄い布地のパーティドレスを包み込むような着心地のいいダッフルコートを手に取った。これなら外の空っ風も防げるだろう。
ハンガーにかけられたコートを外そうとした時、背後から刺すような視線が感じられた。振り向くと、母が能面のような表情で、しかし目だけは哀愁と殺意が入り混じった感情を浮かべている。
ああ、私は間違えたんだ。そう思ってダッフルコートを元に戻し、ドレスによく合う上品で可愛らしいコートを取り出した。流行りのスモーキーピンクに、裾がふわりとワンピースのように広がる本当に可愛いコート。これでは冷えた風が首元と脚を通ってとても寒いだろう。でも、正解はこれなのだ。
「今日のパーティ、楽しみね」
仮面のようだった母の表情は元に戻り、にこやかにそう言って洗面所の方へと去って行った。母の化粧が終わったら、出発だ。
コートを持ってリビングに戻ると、父がソファに座っていた。オーダーメイドのスーツはビジネスマンだった父にぴったりと合わせて作られていて、現役を引退したとは信じがたい姿だった。
「そういえば、期末テストはどうだった?」
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