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必死になって宣言してくる東雲の顔は熟れた林檎のように赤い。
でもきっと、それ以上に俺の顔は真っ赤になっていたことだろう。でも。直後に卒倒してしまった俺には、もう何がなんだかの状態でございました。まる。
――――なんて。
漫画の世界みたいに卒倒できればよかったのに、現実はそう甘くはなかった。
ポカンと呆けた俺を必死に見つめて、東雲は言葉を続ける。
「おれ、のむらが大好き。高校の時から、ずっと好き」
「…………そんな、嘘だ」
「嘘じゃない。おれ、嘘言わない」
知っている。東雲は嘘なんかつける性格じゃない。嘘や冗談でキスもしないだろう。
だけど、だって。そんなそぶりは少しも……。
「のむらがいなくなるの、おれは困る。行ってほしくない。一緒にいて、ずっとおれのそば、いてほしい。でも……これは、おれの、わがままだって、わかってる…………」
東雲はわかってるんだ……と小さく呟き、俺を抱きしめる。
雪がふる。真冬の空気に、髪の毛の先までが凍っている。
でも、東雲の腕の中はひどく温かかった。
嗚咽に身体が揺れるが、それがどちらのものか、もはやわからなくなっていた。
「行かないで…………」
一段ときつく、俺を抱きしめる。どこにも行かないでと懇願するように。
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