624人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前が好きだ」
自然と、想いが唇から零れ落ちた。
東雲の耳は、俺の口近くにある。どんなに小さな声だったとしても、ごまかしのきかない距離だ。一生、言うつもりのなかった想いなのに。なんてこった。
どうせ叶わない恋なのに。ああ、でも言ってしまったんだ。どうせ、東雲は泣いている。
ここで俺もふられて、一緒になって盛大に泣いてやろう。
「お前が、ずっと好きだった。高校の時から、ずっと」
俺は今、どういう顔をしているだろう。なんだか、口の中がしょっぱい。ほっぺが、熱いような冷たいような。あれ。なんだ。ふられる前から、もしかして俺ってば。
「……泣か、ないで」
自分だって泣いているくせに、俺の目元を東雲は指先でぬぐう。気の早い涙腺だ。目玉が熱くて、なんか世界が揺らいでいるように見える。
東雲の指は冷気にさらされたせいで冷たくて、それが今は気持ちよく感じる。俺の涙を必死になってとめようとしてくれる東雲が健気で、癒されてしまった。
こういうところが、俺は本当に好きなんだよなぁ。
「お前こそ、泣くなよ」
最初のコメントを投稿しよう!