熱くて冷たいカラフル

第１章 回転世界のホワイト

（あそこのボスの側近は確か左頬に大きな傷があるって…いや、もっとムキムキでいかにもマッチョって感じのデータだったか。目の色も確かヘーゼル……）

目深に被った帽子の奥からちらりと向いた男の目は、比類ないほど透いたブルーだった。

「まったく君の言う通りだよ。例え、階段の中腹にも差し掛からないうちに、君がその足の運びを極端なスローペースにする事を誰も予測できなかったとしても、あのまま落ちる位置を変えずに体を落としていたら回転世界への新たな参加者が増えてしまっていたとしても、何ら君に落ち度はない」

男はあいたた、とわざとらしく言いながら立ち上がる。

ラフなパンツに白シャツといった格好で、昼寝していたベッドからとにかく顔だけ隠して走り出てきた感じだった。
日本では身の丈１７０もあれば背の高い方に数えられるが、海外に居るとそんな身長じゃ歯が立たないのばかりで本当に嫌になる。
今さら日本に帰る場所もなく、風もこっちの方が合っているとは思うのだが、こうも上から見下ろされるとやはり憎々しかった。