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「そういうのを俺の国では慇懃無礼って言う。ただの嫌味野郎とも言うがな。どっちにしても非常に不愉快だ。俺に何か用か」
頭ひとつは優に高い男の、唯一覗ける双碧を睨み付けながら大いに憤慨を伝える。
だがその瞳は、見れば見る程その怒りさえ忘れさせる、『完璧』だった。
瞳孔の黒以外に余計なカラーのない、本物のブルーアイ。
帽子の影がどんなに深く掛かっていようが全く問題にならないそのカラーの透徹と体躯のバランスの良さ、一応加えるなら内容はともかく品の良い喋り方にも、三星は確信などいらない程の情報を察した。
―――アルファ…。まさか、別格アルファか?
ここまで混ざりのないカラーの瞳が、本当にこの世に存在しているのかと疑いたくなるくらい完成度の高いその双球に、これが人身売買のオークションにかかったらコレクター達は一体幾らの値をつけるだろうとつい考えてしまう。
これまでの最高額を塗り替える事はさして苦労なく実現できるなと、そのブルーを邪魔しない金白のまつげにも目を細めた。
大多数を占めるベータと区分された人間の上層には、アルファと呼ばれる何事にも秀でた一握りが存在する。
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