賢者たちの贈り物

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賢者たちの贈り物

 もうすぐクリスマスかと、男はカレンダーを見て思った。世間はいつのまにかハロウィンの飾りを脱ぎ捨てて、赤と緑に染め上げられていた。まだあと一ヶ月はあると言うのに、それでも街灯は金色に染められ、駅前は眩しいLEDで装飾されている。  こうなって困るのは、目下同棲中の恋人に何を贈るか、ということである。出会ってすぐの頃はまだよかった。何をあげても嬉しそうに笑い、どんなものでも大切そうに胸に抱いていた。しかしもう、こんな関係になって五年が経とうとしている。  月日というのは恐ろしいもので、大学生だった男もいつのまにか社会人になっていた。それは相手も同じことで、サークルのマネージャーとして健気に動いていたのが今では高校の担任をしている。  何かと節目にはそれなりのプレゼントをしていて、卒業するからといっては名前の掘られたボールペンをあげたり、社会人になったから少し高価な手袋をあげたり、その流れで次の年にはこの部屋の合鍵を渡した。でももう、正直いって手札がない。完全に尽きてしまった。     
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