賢者たちの贈り物

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 嫌いになったわけではない。そういうわけでは、断じてないのだ。漫然と続く日常が、当たり前になってしまったのだ。それぞれがせわしない日々を送り、それぞれが自分の生きる場所を見つけている。時間とタイミングによっては床を同じくするけれど、でも普段は別々のベッドで寝ている。要するに、ただ慣れてしまった。ただそれだけの話だった。 「どうすっかな、クリスマス」  半分残ったビールをごくりと飲んで、そう呟いてみる。特に何かいい案があるわけではない。ちょうど風呂に入っているのをいいことにふと考えてみたはいいけれど、自分で自分の首を締めているだけのような気もしてきた。  多分、相手の性格を考えて何も準備をしなくても怒ったりはしないだろう。もしかしたらいつもと何も変わらない、ただ十二月の二十五日目にやってくる日と思っていても咎めることはないだろう。  そんなことさえわかるくらいには男は相手のことをよく知っていた。知った上で、それでも何かをあげたいと思うのだ。その感情が、まだ男と相手が一緒に暮らすことができる証拠でもあった。 「どーすっかなぁ」  相手が風呂に入っていることをいいことに、男は近くに置いていたタブレットを引き寄せて検索ワードを入れてみる。困ったときはネットの力だ。全てが正解というわけでもないが、不正解ということもないだろう。     
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