賢者たちの贈り物

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 ぼんやりしながらページをスクロールして、ふと見つけた記事をタップする。並んでいる文字を読みながら、なるほどこれはいいと思い、急いで手帳をひっくり返した。久しぶりに胸の奥がワクワクしている。置きっ放しにしていたビールはいつのまにか温くなってしまったけれど、それでも男は気にすることなくタブレットを操作する。  きっとこれなら喜んでもらえるだろう。そんなことを考えながら、自分の?が緩んでいることも気づかずにいた。  さて、そんなこんなで十二月二十四日。この日、男はいつもより早く目が覚めた。それもこれも、全ては一ヶ月前に立てた計画を遂行するためだ。目覚ましがなるよりは役に起きて、それからこっそりと部屋を抜け出し荷物を詰める。相手はまだぐっすりと夢の中だ。今のうちに手早く支度を済ませないと。  トランクに最低限の荷物を入れる。着替えと、充電器と、あとはまあ財布くらいか。でも自分のぶんだけじゃなくて相手のも入れておかないと。そう思ってこっそりクローゼットを見てみると、なぜか想像以上に服が少なかった。  はて、本当ならもっとたくさん入っているはずなのに。おかしなことがあったものだと男は首をかしげる。この前洗濯をしたときは今よりももっと服があったはずだ。こんなにも、スカスカだったはずはない。 「なんだ、これ」  もしかしたら泥棒でも入っただろうか。いやでも、そうしたら服なんかよりも通帳を真っ先に盗むだろう。それに、相手の持っている服はどれも平凡といったもので、売ったところで金にはならない。     
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