賢者たちの贈り物

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 男の頭にあったのは、この二つの予約をどうするかということではなかった。ただただひたすらに、相手のことを愛おしく思ったのだ。それまで漫然と過ごしてきて、隣にいることが当たり前になってきて、それでもまあこのままダラダラと暮らし続けるのだろう。そう思っていたところに、まさかこんな風にお互い同じことを考えていただなんて。  その事実が、どうしようもなく、嬉しかった。 「私の方は今すぐに使う必要ないから、また今度にして……もう、そういうことならクリーニングに出してた服、取りに行かなきゃじゃない。って。なにその顔」 「え、そんな変な顔してる?」 「してる。へらへらして、ニヤニヤしてる」 「そっか」  ああ、そうだ。今まさに、今日にふさわしいプレゼントを思いついた。形のない贅沢な時間もいいけれど、それよりももっと今の男と相手にふさわしいものがこの世にはある。  そう思い、男は急いで相手の手を掴んだ。 「ホテルに行く前に、一つだけ行きたいところがあるんだ」 「いいけど。どこ?」  このまま区切れもなく続く日常に、終止符を打とう。それは別れではなく、これから先も、同じ方向を見続けていたいという、希望だった。  だからこそ行かなければならない場所がある。 「駅前の、指輪屋さん。そこに行こう」 「指輪? なんで」 「なんででも。ほら行こう、早く早く」  お互い持ち寄ったプレゼントはどちらも被ってしまって、結局笑い話になってしまったけれど。でもそのおかげで見えてきたものがある。その小さな輝きだけで、男にとってその日はかけがえのない一日になった。     
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