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すずは困った顔をして大きくため息をついた。
直人のあまり物事に動じない男っぽい性格が、すずは大好きだった。
小学生の時から、人より少しだけ体が大きかった直人はいつも皆に頼られた。
特にやんちゃな純と組んでいたせいもあり、直人のおおらかさは際立って見えた。
すずの学年の女子は純派と直人派に別れるくらいに、二人は本当によくモテた。
すずはそんな二人の近くに居れるだけで幸せだった。
どっちかを好きだなんて何があっても言えないし、言いたくもない。
だってそんなちっぽけな些細な事でこの関係が壊れてしまう方が、すずにとっては耐えきれない事だったから。
すずの気持ちは自分しか知らない秘密だった。
「でも、今回はちゃんと手紙を書くからね」
すずは小さな子を諭ように、直人にそう言った。
「うん、了解。
すずが書いていいよ。
その方が純は喜ぶから……」
直人はそう言うと、すずが買ってきたレターセットをすずの前に置いた。
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