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どうやら彼は、植え込みに半分隠れていたディアナには光の速さで気が付いたのに、庭園の前に堂々と立っていたロッテには今の今まで全く気付いていなかったようだ。
「え? あ、ご紹介に預かりました、庭師のテオです。どうぞよろしく」
泥のついた軍手を外し、エプロンで手のひらを拭って、テオが右手を差し出した。人懐っこく笑うテオの手を軽く握って、ロッテも名を名乗る。
「魔女見習いのロッテです。薬を作るのに薬草を分けて欲しくて……」
そう言ってロッテがメモを手渡すと、テオはふんふんと頷いて、「ちょっと借りるよ」とメモをチラつかせながら植物の合間に姿を消した。
テオがいなくなると、ディアナが一際大きな溜め息を吐いた。
いつもはつんつんしていて近寄り難いディアナだけれど、テオの勢いに押されて困っている姿はちょっぴり可愛かったかもしれない。
くすりと笑って、ロッテはテオが戻るのを待った。
しばらくして戻ってきたテオは、小さな鉢植えのハーブをいくつも載せた浅い木箱を両腕で抱えていた。
ロッテの前でメモを読み上げながらひとつひとつハーブの名前を確認すると、テオは木箱ごとロッテにハーブを手渡した。
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