第1話 王子様との出会い①

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 フィオラント王国の北には大きな森がある。  ファナの森と名付けられたその森には獰猛な魔獣が棲んでいて、その昔、近隣の村人は魔獣の襲撃に怯えて暮らしていたけれど、昨今では魔獣の襲撃による被害は殆どないと言われている。その理由はふたつ。  ひとつは、八年前の王国騎士団による大規模な魔獣討伐で魔獣の数が激減したから。もうひとつは、ファナの森に住む偉大な魔女が魔獣が森の外に出ないよう常に結界を張っているからだ。  結界により森の外に出られなくなった魔獣は、陽の当たらない森の奥を日夜徘徊する。そんな危険な森の奥に足を踏み入れるなんて大馬鹿者のすることで、賢い人間は森には足を踏み入れない。だから、万が一この森で魔獣に襲われたとしても、助けが来ることなんてあり得ない。  そう、あり得ないのだ。
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