第1話 王子様との出会い③

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 リーゼロッテの冷たい言葉を耳にしてロッテは咄嗟に口を挟んだ。けれど、ものすごい形相でリーゼロッテに睨み付けられて、慌てて口を噤んでしまった。黙り込んだロッテに満足そうにうなずいて、リーゼロッテはさらに一言付け加えた。 「私が森を離れたことで結界が破れ、近隣の村に犠牲が出たとなっては、王子とて不本意でしょう?」  ――ひどい。  ロッテは両手を握りしめ、きゅっと唇を噛み締めた。  リーゼロッテは昔から、この森の結界を理由に王宮に上がるのを拒んでいるけれど、この森の結界は数年に一度術をかけ直すだけで維持できる簡単なものなのだと彼女が以前得意げに話していたことを、ロッテはちゃんと覚えていた。  ものぐさなリーゼロッテは面倒ごとに巻き込まれたくないだけなのだ。ユリウスは国王である父のために、この国の人々のために真剣に頼んでいるのに、こんなの酷すぎる。  捨てられっ子だったロッテを育ててくれた人だから、ロッテは今までずっと、リーゼロッテの理不尽な要求にも従ってきた。けれど、多くの命が懸かっているこの状況でも自分のことしか考えない、こんなに冷たい人だったなんて!
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