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言い表し様のない怒りに震えるロッテのすぐそばで、リーゼロッテの話はまだ続いていた。
「私は王と契約した身。他の者に仕えることは出来ません。それは例え王太子である貴方様が相手でも同じこと。ですが、契約者である王をこのまま見捨てるわけにもまいりません」
つらつらとそう告げると、リーゼロッテは余裕たっぷりの笑みをロッテに向けた。
「私の代わりにこの娘、ロッテをお連れください。この娘は私の唯一の弟子。必ずや貴方様の――フィオラントのお役に立ちましょう」
一瞬、リーゼロッテが何を言ったのか、ロッテは理解ができなかった。
期待に満ちたユリウスの視線をその一身に受け止めて、ロッテははじめて事の重大さを理解したのだ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいお師匠様! わたしは……」
「ロッテ」
完全にパニック状態に陥りながらリーゼロッテに訴えかけたロッテだったが、その言葉はユリウスの良く通る低い声で遮られてしまった。
頭の中は真っ白なままで、ロッテは恐る恐るユリウスを振り返った。
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