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「それにしたってひどいです。わたしがこれっぽっちも魔法を使えないこと、知ってるくせに」
ロッテが不満をあらわにすると、リーゼロッテはベッドの上に後ろ手をついて踏ん反り返り、ロッテの訴えをかるく笑い飛ばした。
「馬鹿かお前は。王子が必要としているのは疫病の特効薬だ。魔法なんて必要ないんだから私が出向くまでもない。お前はただ疫病の感染経路を突き止めて、治療薬を開発すればいいんだ」
「他人事だと思って簡単に言いますね」
ロッテの不満は治らない。当然だ。
リーゼロッテは簡単に言うけれど、それがどれほど難しいことなのか、外の世界を全く知らないロッテにだって理解できる。
ロッテがいつまでも膨れっ面でいたからだろうか。リーゼロッテはようやく笑うのをやめ、やれやれと肩を竦めて宥めるように言った。
「まあそう言うな。私が面倒ごとを嫌うのなんて分かりきったことだろう?」
「その言葉、その態度、ユリウス様にお見せしたいです」
「お前にとっても良いことづくしだろう。お前みたいな娘っ子が王宮に上がれるなんて、そうそう出来ない経験だぞ」
「別に、王宮に興味なんてないですし」
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