496人が本棚に入れています
本棚に追加
/512ページ
「初恋の王子様に会えるかもしれないじゃないか」
リーゼロッテに指を指されて、ロッテはハッと顔を上げた。
そうだった。ユリウスの身のこなしと剣捌きはあのときの――八年前にロッテを助けてくれたあの騎士とそっくりだったのだ。もしかしたらユリウスがロッテの初恋の王子様なのかもしれない。
陰鬱だった思いが晴れやかな思いに塗り替えられて、ロッテの琥珀の瞳が希望の光を宿す。
ロッテが期待に胸を膨らませていると、その様子をにやにやと眺めていたリーゼロッテがおもむろに腰の後ろに手を回し、何かをロッテに向かって差し出した。
「餞別にくれてやる」
ぱちくりと目を瞬かせて、ロッテはそれを受け取った。
手渡されたのは古びた一冊の本だった。中を見なくてもわかる。それは、ロッテがずっと欲しがっていた、リーゼロッテが大切にしていた、第一言語で書かれた薬草学の学術書だった。
「これっ……この本、ほんとうに良いんですか!?」
「ああ。特効薬を作るなら必要になるだろうし、お前、前から欲しがってただろ」
「ありがとうございますっ!」
まさか、リーゼロッテがこんな素敵なプレゼントをくれるなんて!
最初のコメントを投稿しよう!