第1話 王子様との出会い④

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 それまでの不満がひと息に吹き飛んで、ロッテは嬉しくなって学術書をぎゅっと胸に抱きしめた。  実のところ、リーゼロッテはつい先日、この学術書を現代語に訳し終えて不要になっただけだったのだが、そこは敢えて伏せておき、恩を売るのがリーゼロッテのやり方だ。ロッテはいつも、こうして知らないうちにまんまとリーゼロッテに乗せられてしまうのだ。 「わたし頑張ります! お師匠様の名前に恥じないように、この仕事をやり遂げてみせます!」  学術書を片腕で抱きしめたまま、ロッテはもう片方の手で拳をぎゅっと握りしめた。そのとき、学術書からひらりと紙切れが舞い落ちて、ロッテはきょとんと目を丸くして、床にしゃがみこみ、紙切れを拾い上げた。紙切れには整然とした文字がびっしりと記されていた。 「なんですかこれ……」 「リーゼロッテ特製ブレンドの媚薬のレシピだ」 「媚薬……?」 「あのクソ真面目な王子に使ってやれ。玉の輿も夢じゃないぞ」  楽しそうにそう言って、リーゼロッテはにこりと微笑んだ。  要するに、既成事実を作って責任を取らせてしまえと言いたいらしい。
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