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なんてものを寄越すのだろう。せっかく見直しかけていたのに、リーゼロッテは相変わらずいつものリーゼロッテだったようだ。
ロッテはユリウスにそんなものを使うつもりはなかったけれど、せっかくリーゼロッテが師匠らしく弟子のために用意してくれたものならば。
紙切れを四つに折りたたんで学術書に挟むと、ロッテは旅行鞄に学術書を詰め込んだ。ぱんぱんになった旅行鞄はずっしりと重く、ロッテはそれを両手で抱えて扉の前でもう一度、部屋の中を振り返った。
「それじゃ、いってきます。ご飯、ちゃんと作って食べてくださいね。掃除も洗濯も、さぼっちゃダメですよ」
「はいはい」
ロッテのベッドでくつろぎながら、適当な返事と共にひらひらと手を振ってみせるリーゼロッテに見送られて、ロッテはユリウスが待つ広間へと向かったのだった。
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