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ぴんと背筋を伸ばした騎士の身の丈は長身のユリウスよりもさらに高かった。肩幅も広く、身体つきも――と言っても鋼鉄の鎧に覆われて見えないけれど――がっしりとしている。風に揺れる赤銅色の髪と太い眉に、黒曜石に似た鋭い瞳が印象的な、精悍な顔立ちの男だ。
ユリウスを絵に描いたような美しい王子と形容するならば、この男は絵に描いたような逞しい騎士といったところだろう。
顔から足先までロッテがじっくりと観察していると、騎士の眼が不意にロッテに向けられた。鋭い視線に射抜かれて、ロッテはびくりと縮こまった。
「……この娘は?」
太い眉を片側だけ吊り上げて、騎士が訝しむようにユリウスに訊ねた。
「魔女のロッテだ。我々にちからを貸してくれる」
「リーゼロッテ様……にしては、随分とお若いようですが。まさか、若返りの禁術をお使いになられたのですか?」
「はははっ、違う違う。彼女はリーゼロッテ様の弟子なんだ」
真面目くさった騎士の問いに、ユリウスは楽しそうに声を上げて笑う。それからロッテを振り返り、小さくうなずいてみせた。
「ロッテ、説明してくれるかな」
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