第1話 王子様との出会い⑤

7/8

496人が本棚に入れています
本棚に追加
/512ページ
 追い討ちをかけるように騎士が大袈裟な溜め息を吐いたので、ロッテは騎士の視界から逃れるようにユリウスの陰に身を潜めた。 「彼女は私と一緒に馬車に乗ってもらう。それでいいだろう?」 「……殿下がそう仰るのであれば。ですが、くれぐれもお気を付けください。この娘はどうにも信用なりません」  そう聞こえた直後、ロッテが抱きかかえていた旅行鞄が強引に奪われた。はっとして顔をあげると、ロッテの旅行鞄を脇に抱えて、さっさと馬車に向かう騎士の背中が目に映った。  大切なものがたくさん入っているのに、あんなに乱暴に扱うなんて!  慌てて抗議しようとしたけれど、ロッテが口を開く間もなく騎士はずかずかと馬車に歩み寄り、旅行鞄を手早く荷台に括り付けてしまった。それから騎士はひらりと馬に跨って、ユリウスに手を引かれてロッテが馬車に乗り込むまで、ロッテのことをずっと睨み付けていた。  馬車が動き始めると、ユリウスは先ほどの騎士についてロッテに話して聞かせてくれた。
/512ページ

最初のコメントを投稿しよう!

496人が本棚に入れています
本棚に追加