第1話 王子様との出会い⑤

8/8

496人が本棚に入れています
本棚に追加
/512ページ
 ゲオルグ・アインベルクはフィオラント国王の近衛騎士隊長ヴィルヘルム・アインベルクの息子であり、此度の魔女の森の試練にあたり、王太子ユリウスの護衛を任され た騎士だという。剣の腕前はフィオラント騎士団でも一二を争うほどで、普段は魔獣討伐の任務のために国内のあちこちを飛び回っているそうだ。 「どうか彼を悪く思わないで欲しい。私がこういう性格だから、疑い深くなってしまっているだけなんだ」  困ったように微笑んで、ユリウスは軽く頭を下げた。王太子であるユリウスの頼みとなれば無下にできるはずもなく、ロッテは複雑な思いのまま窓の外へと目を向けた。  街道の先に、白いマントをはためかせて馬を駆る騎士の姿があった。波打つように揺れるマントをロッテがぼんやりと眺めていると、不意に騎士が振り返り、ロッテの姿に眼を止めた。ロッテが慌てて会釈をすると、彼は一瞬露骨に顔を歪ませて、それから何事もなかったかのように道の先を見据え、馬の尻に鞭を打った。  なんて無愛想で、失礼なひとだろう。  ゲオルグ・アインベルクの第一印象は、はっきり言って最悪だった。
/512ページ

最初のコメントを投稿しよう!

496人が本棚に入れています
本棚に追加