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「きれい……」
ロッテがうっとりと呟いた、ちょうどそのとき、石橋を渡り終えた馬車ががたんと大きく揺れて、宙に浮いたロッテのからだが半分ほど窓の外に投げ出された。同時にくんと後ろに引っ張られて、咄嗟に窓の縁にへばりつく。御者席から声を掛けられた気がしたけれど、どきどきと高鳴る胸の音がうるさくて、ロッテには御者の声が聞こえなかった。
ほうっと息をついて馬車の中を振り返ると、驚いたように眼を見開いたユリウスが大きく身を乗り出していた。よくよく見ると、その手にはロッテの服の端が握られていた。
「大丈夫?」
「……すみません。はじめて見るものばかりで、つい興奮してしまって」
心配するユリウスに、ロッテは消え入るような声で答えた。恥ずかしくて情けなくて、顔から火を噴きそうで。ロッテが馬車の座席の上で小さくなっていると、ユリウスはくすりと笑ってロッテに言った。
「それなら、王都に着いたら買い出しついでに街の見学もしてみるといい。王宮のハーブ園や薬草園もきっと気にいると思うし、護衛をつけて街の外に出掛けてくれても構わないよ」
「街の外に出るのに、護衛が必要なんですか?」
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