第2話 ロッテ、王宮に上がる①

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「大丈夫、ちから不足なのは私も同じだ」  そう囁いたユリウスが、ロッテの手をかたく握り締める。 「私が今こうしていられるのは、皆のちからを借りているからだ。私は皆の期待に応えたい。だからロッテ、きみにもちからを貸して欲しい。私を信じてくれないか」  ユリウスのやわらかな低音が紡いだ言葉は、萎んでいたロッテの気持ちをそっと後押ししてくれた。ロッテは大きくうなずいて、窓の外――都の中心に位置する小高い丘の頂を仰いだ。いつのまにか外は夜の色に染まり、見上げた丘の上に、石造りの壁に守られた宮殿が蒼白い月明かりに照らされて佇んでいた。  ユリウスとロッテを乗せた馬車は、ゲオルグの先導で居住区と商業区を通り抜け、両側を石の壁で囲まれた長い坂道を上った。やがて道が拓けると、金色の柵に囲まれた広々とした庭園の向こう側に白亜の宮殿が現れた。
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